3年目の正念場 − Wake Up, Girls! 3rdライブツアー開幕&舞台化発表

 2ndライブツアー以来のご無沙汰です。今でもしっかりワグナーやってますよ。

 さて、一昨日7月17日よりWake Up, Girls! 3rdライブツアーが、千葉・舞浜アンフィシアターを皮切りにスタートした。今年は千葉から大阪、新潟、仙台、沖縄、福岡、最後に東京・Zepp DiverCityと、全7ヶ所昼夜合計14公演という、なかなか野心的でハードなスケジュールとなっている。自分は諸々の事情で、今年は最初の舞浜と最後のZeppしか行けないのだけど、とにかく彼女たちを応援する気持ちは変わらない。

 ライブの感想を書く前に、少しこの1年のWUGを振り返ってみたい。

 チャレンジングで熱い2ndライブツアーは、劇場版アニメへと繋がる布石でもあった。9月と12月に前後編として公開された劇場版は、奇をてらったものではなく、プロットとしては王道で、それ自体は悪くないものだった。しかし約50分を2本、テレビ放映の4話分に収めるには詰め込み過ぎで、いきなりダイジェスト版を見せられた気分であり(特に後篇)、相変わらずもったいない出来の作品になってしまった。

 それでも一つの区切りを迎えたアニメ作品を締める形で開催された12月の幕張イベント。これにも参加してきたが、ライブは素晴らしかったものの、中盤の野球コーナーでダラダラと1時間も費やしてしまい、非常に間延びしてしまったのが残念すぎた。一昨年の幕張イベントは評判がよく、ブルーレイにもなったが、昨年のはどうやらお蔵入りしそうである。

 という感じで、作品絡みのキャンペーンは今一つの効果で終わってしまったのではないかと思う。もちろん実態は分からないが。

 しかしそんな中、「今度は自分たちが作品を引っ張っていく番だ」と、三次元のWUGメンバーたちが意気込みを新たにしている。それは単にあちこちで作品の宣伝をするということではなく、各自が新たな作品やイベントに関わっていく中で、しっかり自分たちの存在をアピールし、多くの人たちに知ってもらうことで、結果としてWUGにも興味を持ってもらおうと頑張っているのだ。

 3月のソロイベも、ななみん、よっぴー、あいちゃん、かやたん、まゆしぃの回に参加。昨年のソロイベのときよりも自信を持って自己アピール出来ており、みんな本当に頼もしくなってきている。

 そうして迎えた3rdライブツアーである。今回はホムラジであいちゃんを知ったというアイマスPを一人連れていくことが出来た。これもあいちゃんをはじめ、メンバー一人ひとりが自分の個性を活かし活躍しているからこそだ。

 オープニングはまさかの「Beyond the Bottom」から。最初からクライマックス感で、会場はみんな緑を主に、色付きライトを用意してたので、慌てて白に変更。そこから「少女交響曲」「素顔でKISS ME」と、昨年の劇場版の曲を連続で披露。もったいつけてない感じで、ぐいぐい攻めてきた。

 そして挨拶MCを挟んでの新曲。一発目は7人全員で歌う「HIGAWARI PRINCESS」。今回7ヶ所を巡るツアーでは「プリンセスシステム」という会場毎の当番制を採っており、この曲のセンターも会場毎に替わるということで、この舞浜ではみゅーちゃんが担当した。可愛らしい曲で、去年の「地下鉄ラビリンス」みたいにライブで見て楽しいタイプだ。

 続いてあいちゃん、みゅーちゃん、みにゃみの三人ユニットによる「タイトロープ ラナウェイ」。当人たちも言っていたとおり、おふざけ衆にもかかわらず聴かせるタイプの曲。そしてまゆしぃ、よっぴー、ななみん、かやたん四人による「outlander rhapsody」。こちらも少年たちの冒険を表した感じの、WUGとしては新しいタイプの曲として聴かせてきた。初回でワグナーの反応も決まっていないが、「プラチナ・サンライズ」のように間奏以外はコールなしがいいなと感じさせる2曲だ。

 そこからこの舞浜公演のプリンセス、みゅーちゃんの出番である。お馴染みのキャラソン「WOO YEAH!」で盛り上げた後、新曲の「It’s amazing show time」は、これまでライブで積み重ねてきた思いを振り返りながら語りかけるように優しく歌い上げる。そこにはアニメの岡本未夕もリアルの高木美佑も同時にいて、この天真爛漫の笑顔にも成長の跡がしっかり見えて、とてもしみじみとした気持ちに満たされた。本当にどんどん素敵になってるんだよね、みゅーちゃんは。

 ここで意外に早めの物販映像が流れた後、衣装替えしてI-1 Clubの「止まらない未来」と「運命の女神」。更に昼はまゆしぃ、みにゃみ、ななみん、みゅーちゃんによる「リトル・チャレンジャー」、夜はよっぴー、あいちゃん、ななみん、みゅーちゃんによる「レザレクション」と続いた。WUGをユニットとして見た場合、持ち歌が増えてきた今、I-1の曲を歌うことには微妙に感じるところはある。しかし後で触れるが、このライブはやはり作品としてのWUGが前提としてあり、外すことは出来なかったのだろう。曲はよいので、ライブとして盛り上がる分には異存なく、「レザレクション」など本来は1+3構成のところを、4人構成に組み直して、ちゃんと全員に見せ場のあるパフォーマンスに仕上げてきていた。

 さて、ここで再び衣装替えのために、スクリーンにはアニメの映像が流れる。アニメ全編をダイジェストとして構成された映像は、過去へと遡る形で観衆を思い出へと誘い、まだユニットが生まれる前のオーディションの場面まで導いていく。後から気づいたことだが、実はこれがこのライブの無言の設定になっているのだ。

 映像が消えて暗転し、衣装替えしてステージに現れたWUGちゃんたちは、「Beyond the Bottom」の衣装を身に纏っていた。冒頭に歌った曲をまた歌うのかと一瞬戸惑ったところで流れてきたのは、「言の葉 青葉」のイントロだ。初期の思い出を噛みしめるように歌う彼女たちと、それを聞き入るワグナーたち。続いて同じく初期の拙さと初々しさが染みこんだ「16歳のアガペー」。今これを歌うWUGちゃんたちには、もちろんもうあの頃のような拙さはなく、この曲の初々しさも含めて、しっかり自分たちのものにしている。そして本編最後のMCの後、「私たちの始まりの曲」、夜公演では「初心を忘れずに」といったまゆしぃの言葉とともに「タチアガレ!」。もはやワグナーにとっても体に染みこんでいるこの曲で会場は一体となり、公演本編を締める。

 ここで改めて最後の衣装について触れたい。何故「Beyond the Bottom」の衣装だったのか。夜公演が終わった後も、自分の中ではこれが違和感となって引っ掛かってたのだが、他のワグナーたちの感想ツイートを眺めていたら、なるほどと納得する言及があった。このライブの影のコンセプトは、3年目のWUGちゃんたちによる、これまでの歩みの振り返りなのである。アニメ作品としては最後の衣装であるBtBの白い衣装で、今ここまで歩んできた思いを込めて、初期の3曲を歌っていたのだ。過去へと遡るアニメ映像はその流れを演出しており、冒頭が「Beyond the Bottom」だったことにも、その意図があった。ライブを作品全体の中で構成しているから、当然I-1の曲も外せない。みゅーちゃんの新曲も、3年目の岡本未夕が歌っている。多分この後の公演で披露される各メンバーの新曲も、そのコンセプトに基づいているのだろう。

 お約束の「Wake Up, Girls!」コールで再びステージに現れたWUGちゃんたちは、ラフなライブTシャツに着替えて、最後はお馴染みの「7 Girls War」と「極上スマイル」で、みんな楽しく笑顔でライブを締めた。

 そのアンコール曲の間で昼に発表されたのがWUGの舞台化だ。原案・監督のヤマカン氏が無期限休業と宣言してるせいで、アニメ作品の今後は今のところ完全に白紙状態なのだけど、コンテンツとしてのWUGを終わらせるわけにはいかないという、メンバーとスタッフたちの思いが、舞台という形を導き出したのだろう。キャストは当然メンバー当人たちである。まさに体を張って三次元のWUGちゃんたちが、作品を引っ張っていこうというのだ。大抵アニメの実写化とか舞台化というのは叩かれるものだけど、これについては両手を上げて応援したい。公演は1月でまだ先だけど、絶対に見に行く。

 そしてもう一つこの舞浜公演で強く印象に残ったこと。夜公演のアンコールの合間にななみんのバースデー祝いをしたのだが、そこで語った彼女の今後へ向けた抱負の言葉が強烈だった。

 「私の役目は他からファンを連れてきて、WUGを大きくしていくことです!」

 実際に言った言葉は多少違うかもしれないが、他からファンを連れてきてWUGを大きくすること、それが自分の役目であること、そう明言したのである。ななみんはみにゃみと並んでWUG以外の仕事量も多く、売れっ子若手声優の仲間入りをしてきている。まだ目立った仕事の少ないメンバーやその子らの推しファンからすれば、嫌味にも聞こえかねない際どい言葉だ。しかし自分のホームがWUGであることを自覚し、仲間を信頼しているからこそ、こういう言葉を言えるのだろう。普段はほわほわしたタイプなのに、この時のななみんには凄みすら感じられた。

 全体を振り返って、今回のライブには新鮮さや驚くような挑戦はなかった。新曲も新たな代表曲となるようなインパクトには乏しく、保守的な印象は否めない。影のコンセプトが3年間の振り返りであったのだから、それは仕方ないのだろう。しかしだからと言って、つまらなかったわけではない。コンテンツ的に新しいものがない中で、一旦後ろを振り返られるだけの成長がはっきり見え、今出せる最大限のパフォーマンスで会場を盛り上げてくれた。もちろん舞浜はツアー初日で、去年同様ステージを重ねる毎にブラッシュアップしてくることだろう。ただ2nd初日ほどの不安定感はなく、彼女たちの自信の度合いが今年は違う。

 3年目のWUGは、明らかに正念場に立っている。だからこの3rdライブツアーは、一見保守的であっても、それは守りに入っているためではなく、道なき道へ踏み出すための決意表明のステージなんだと捉えたい。

 ツアーの途中を追えないのは残念だが、最終のZepp DiverCityでグッと踏み出す彼女たちの姿を、もう一度確認したいと思う。