true tears

って、まずアニメからかよ!

true tears vol.1 [DVD]

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 ブルーレイ化したい作品として選ばれ、今改めて話題になっていることから、正月にレンタルでまとめ見した。もっともBDの限定生産予約にまでは便乗してませんが…。余談だが、自分が「アニヲタ3級」と自称しているのはこういったところにあるわけで、つまり黒帯段持ちクラスの皆様が人気に火を点けたりいろいろ評価した作品を後から便乗して見るのが茶帯3級レベルということなのです。

◆さすがにBD化を望まれただけあって、作画はとても丁寧できれい。より高画質で見てみたいという気持ちはよく分かる。舞台となる富山の景色は、一昨年11月に一度旅行していたお陰で、リアルな光景としてすんなり目に入ってきた。冬の日本海など自分で見てきたままだ。そして人物の描写もとてもうまい。台詞では必ずしも表されなかったり、裏腹な言葉で語られたりする場面も、人物たちの表情から本当の感情が伝わってきた。特に作品のテーマとなる「涙」の描写は、実に気合が入っていたと思う(涙を流せない乃絵の涙は最後まで明確には描かれなかったけど)。ストーリーも13話で上手にまとまっていて、総じて良い作品だった。

◆難点といえば、男どもの魅力に欠けたとこかな。サブキャラの三代吉は最初の浮かれっぷりが鬱陶しかったのだが、最後は男らしく愛ちゃんへの気持ちに筋を通したのでよしとしよう。しかし肝心の主人公たる眞一郎には最後まで納得できる魅力を見出せなかった。確かに優しい少年なんだけど、優柔不断なお坊ちゃん体質はどうやっても直らなそうで、何で君がそこまでモテモテなんですか?と小一時間問い詰めたくなる。「眞一郎は飛べる!」と最初から断言していた乃絵ちゃんには最後まで「ちょっと買い被り過ぎだぞ」と諭してやりたかったよ。3人の女の子たちの恋心を表現するための小道具として必要なのはしょうがないが、彼女たちの強い個性に比べると、なんとも弱い主人公だったなと。

◆話の本筋とは外れたところでとても気になったのは、眞一郎と比呂美の親たちの過去。「二人は異母兄弟かもしれない」なんて話が出てきたときには、キスすらしない純愛ドラマだったはずの「冬ソナ」で実は親たちが一番ススんでました的展開になるのかと冷や汗かいたが、さすがにそれは嘘ってことで、しょうもないドロドロにはならずにすんだ。しかし比呂美にそんな嘘をつき、アルバムの写真から顔を切り捨てるほど死んだ比呂美の母を憎んでいた眞一郎の母の心の真相は、結局最後まで具体的に表現されなかった。一応の和解後、比呂美の部屋で言った「待つって…、体力いるのよね。」という眞一郎の母の台詞から、眞一郎の父と比呂美の母が単なる友だち以上の関係だったことが伺われる。寡黙でしっかりしている父として描かれてるけど、案外女性にはどっちにもいい顔してしまう優柔不断男で、眞ちゃんは実は思い切りお父さん似なのかもしれない。と同時に、裏腹な言葉を思わずついてしまうところなんか、実は比呂美と眞一郎の母が結構似ているんじゃなかろうか。先の台詞も、眞一郎母の比呂美への共感を示唆する演出だったといえる。そうすると眞一郎が最も独占欲の強い比呂美とくっついたことで、いずれ恋愛感情を完全に振り切った乃絵が全く悪びれず天真爛漫に眞一郎に寄ってきたとき、焼もち全開の比呂美が黒い台詞を吐き始める様子も想像できちゃったりする。

◆もっともそういったところまで含めて比呂美が一番人間臭く、眞一郎を必要としていたと思われ、そのようなエンドによってストーリーとしては一番まとまりよくおさまったと思う。青春恋愛ストーリーとしてスタンダードとなりえる佳作だといえるだろう。