桜庭一樹『GOSICK』

GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)

GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
前世紀初頭、ヨーロッパの小国ソヴュール。極東の島国から留学した久城一弥は、聖マルグリット学園の図書館塔で奇妙な美少女・ヴィクトリカと出会った。彼女の頭脳は学園の難事件を次々解決してゆくが、ある日ヴィクトリカと一弥は豪華客船に招待され、そこで本物の殺人事件に遭遇してしまう。やがて彼ら自身に危機が迫ったとき、ヴィクトリカは―!?直木賞作家が贈る、キュートでダークなミステリ・シリーズ。

 本屋で平積みになっていた影絵柄の表紙が気になり、裏表紙のあらすじに目を通す。直木賞作家の作品ということなので、試しに読んでみようと(ブックオフに移動してから)購入。

 少し読み進んだところで気がついた。

 これ、ラノベじゃん。

 そしてネットで調べてみたら、最初は本当にラノベとして富士見ミステリー文庫から出版されていて、この本は一般向けに角川文庫から再販されたものだった。そういうことかい…。

 とはいえ一般向けに新装されるだけあって、青臭すぎたり、ファンタジックな方面に世界観が拡大されることもなく、十分落ち着いて読める。私自身は憎悪や狂気を前提に巧妙な殺人を描くことが基本となるミステリーという分野はあまり好きではないのだけど、この作品はラノベのある種軽妙なテイストに落とし込んでくれているお陰で、あまり重々しく鬱な気分にならないのも個人的には良かった。まあそもそも「アニヲタ3級」を自称してるくらいだから、ラノベテイスト自体嫌いじゃないというのもあるのだけどね。

 ミステリーとしてはいくつか説明不足のまま大筋の解決だけでまとめられちゃった感はあるのだけど、基本的には悪くなかったかなと。ただむしろ主人公ヴィクトリカの大人びた慇懃無礼ぶりと時折見せる無垢な少女っぷりが読んでて楽しく、読み手としてはミステリーの謎解きより、ヴィクトリカと久城くんの絡みを中心に読んでいた部分が大きい。

 ところで、この作品の舞台は戦間期であり、久城くんは日本帝国軍人家庭の三男坊としてヨーロッパ留学中という設定なので、台詞に子供染みたところがあるものの、一応坊主刈りの生真面目な少年をイメージして読んでいた。しかしラノベ版の表紙絵を見ると、おかっぱ頭の今時の可愛い男の子になっているのである。如何にもラノベらしい少年像で、台詞だけから考えればそのようなヴィジュアルでもよいのだろうけど、しかし一応軍人の息子というプライドを当人も持っている設定なのだから、やはり坊主刈りイメージの方が正しいような気がする。という意味で、挿絵の入ったラノベ版ではなく、一般向け文庫で読んでおいてよかった。

 シリーズもので、富士見ミステリー文庫では6巻+短編集3巻、角川文庫では3巻分出版されている。私は挿絵なしで読みたいので、今後随時出版される角川版で続きを読んでいこうと思う。