船木亨『メルロ=ポンティ入門』

メルロ=ポンティ入門 (ちくま新書)

メルロ=ポンティ入門 (ちくま新書)

内容(「BOOK」データベースより)
われわれはこの世界に生きており、現代の歴史に属している。それにしては、そのことがちっともぴんとこないのはなぜなのだろう。世界や歴史と無関係に、われわれのささやかな人生がここにある。だからといってとるにたらないことなど何ひとつなく、われわれがものごとを考えて決断するときには、やはり歴史の論理のなかを、おなじ世界の他者たちとともに生きるのである。現実的とはどういうことで、真実を語るとはどのような意味か。メルロ=ポンティ哲学をひもときながら、われわれのもとに到来する出来事を真剣に取扱う姿勢について考える、一風変わった入門書。

 なんとなく「目に見えるものとは何か」という現象学的問いが頭を過ったので、瞬間的に「メルロ=ポンティでも齧っとくかなぁ。」と思って、新書で「入門」と書かれたこの本を手に取った。しかし自分の問いは晴れなかったし、メルロ=ポンティについてもよく分からず仕舞いで終わってしまった。ただ単に通勤電車の中で読むにはきつすぎる内容だったというのはある。しかしこの本は、「メルロ=ポンティ入門」というより、むしろメルロ=ポンティの思想を使った船木さんの思想書だともいえる。メルロ=ポンティを理解する目的には、それゆえあまりいい本だとはいえない。とはいえ、時間をとってしっかり集中的に読めば、思想的に楽しめる本ではあるだろう。