3年の思いを込め原点を演ずる7人 − 舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」を観劇して

 1月19日〜22日、舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」がAiiA 2.5Theater Tokyoにて公演された。私は21日(土)昼公演を一般席(15列目)、及び夜公演をプレミアム席(6列目)にて2回観劇してきた。

 ストーリーは最初の劇場映画『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』を再現したものだが、オーディション風景だけを描いた特典映像の『Wake Up, Girls! - 出逢いの記録』や、TVシリーズを見てから知るような場面も組み込まれている。特に後者については、ライバルアイドルチーム「I-1 Club」をWUGのストーリーと並行して描くことで、本編の主人公である「島田真夢」が抱える過去が、『七人のアイドル』の時点でも見えてくる形になっている。基本的にはWUGのストーリーを全て把握しているワグナーたち向けの脚本だが、初見の人にとっても「一つの物語の始まりとして、少女たちが立ち上がる姿を描いたもの」として楽しめるものだったのではないだろうか。

 WUG7人の配役は、この作品から声優としてデビューしたリアルWUGの7人。もともと「ハイパーリンク」というキャッチフレーズの下、アニメの作品内同様に、ド新人が集まったユニットとしてリアル声優7人がアイドル活動していることにWUGの特性があったが、この舞台は彼女たち自身が声だけでなくリアルな役者として、所謂「2.5次元」の世界を演じる特別なものとなっていた。

 大抵二次元作品の三次元化はアニヲタたちから嫌われる傾向にあるものだが、WUGに限っては二次元と三次元が最初からリンクしているため、ファンであるワグナーたちには告知当初から歓迎されていた。それだけに演じるリアルWUG7人は、大きなプレッシャーを感じていたことだろう。殆どのメンバーは、舞台経験すらなかったのだ。

 しかし彼女たちの演技は素晴らしかった。それはきっと、3年間自分とともにいたキャラクターへの積み重ねた思いが、このステージ上の演技に注ぎ込まれていたからだろう。そして私だけでなく、きっと多くのワグナーたちも、その彼女たちの思いを見つめ続けてきたからこそ、恐らく他の舞台では味わえない感動で胸が一杯になったことだと思う。

 島田真夢が自ら閉ざしていた扉を開いてWUGの中へ飛び込んだシーンの後、この舞台ではアニメの中にはなかった場面が挿入される。社長が失踪し活動継続の是非が問われている中、島田真夢の加入によって一度はやる気を取り戻したものの、1ヶ月経ってもやはりライブの予定が立たず、七瀬佳乃、久海菜々美は具体的な目標がない現状に苛立ちを募らせる。そして佳乃はつぶやく。

 「あのときスッパリやめておけばよかった。……結局自分は何をやっても上手くいかない。もう夢なんて見れない……。」

 2015年暮れ、続劇場版後篇が公開され、アニメ作品としての一区切りがついてしまった時に開催された幕張のWUGフェスで、吉岡茉祐は「まだWUGを終わらせたくない!」と泣きながら叫んだ。リアルWUGの7人も具体的な目標をこの時失っていたのだ。それでも翌2016年、「今度は私たちが作品を引っ張っていく番だ。」とメンバーたちは口々に語り、作品への誇りとキャラクターへの愛情を持ってそれぞれの活動に臨み、7人揃ったときには「WUGここにあり」とばかりに、初見の観衆をも惹きつけるパフォーマンスを演じた。3rdツアー初日に「私の役目は他からファンを連れてきて、WUGを大きくしていくことです!」と宣言した山下七海の凄みは今でも忘れられない。それでも16年暮れの幕張では、みなが「今年は不安で一杯だった。」と本音を漏らしていた。去年は本当に苦しみの中、頑張った1年だったのだと思う。

 脚本の待田堂子は、デビュー当時からの彼女たちをずっと見ていたからこそ、この新たなシーンを挿入したのかもしれない。挫けそうになる佳乃に真夢は、今まで逃げてきた自分だからこそ「もう諦めたくない」という思いを伝える。そして「行き詰まった時に歌う歌」としてTwinkleから教えてもらったという『ゆき模様 恋のもよう』を、7人がアカペラで歌うのだ。普段こういった作品を見ても涙を流すことがない私でさえ、このときばかりは目頭が熱くなるのを抑えられなかった。

 そう、この舞台の上にいたのは、島田真夢を演じる吉岡茉祐ではなく、島田真夢であると同時に吉岡茉祐であり、林田藍里であると同時に永野愛理、片山実波であると同時に田中美海、七瀬佳乃であると同時に青山吉能、久海菜々美であると同時に山下七海、菊間夏夜であると同時に奥野香耶、そして岡本未夕であると同時に高木美佑だったのである。これほどの「ハイパーリンク」があるものだろうか……。

 雪降る演出の中で、バラバラの制服を着て『タチアガレ!』を歌い踊るラストシーン。劇中のライブシーンではコールと手拍子はOKということになっていたが、それをする観客は僅かであった。今、道なき道へと向かいタチアガッた7人。そして3年の思いを込めて新たな道へと踏み出そうとする7人。私たちはきっと、そんな彼女たちを胸に刻みこむように、じっと見つめることしか出来なかったのだ。

 さてこの舞台では、WUG7人以外のキャラクターも、三次元の姿で登場する。しかし岩崎志保役の大坪由佳を除き、全員アニメ声優とは別のキャスティングだ。だがなんということか、全く違和感を覚えないのだ。特に松田耕平役の一内侑の演技は、アニメの松田以上にWUG7人とともにいると感じさせる松田だった。社長も『七人のアイドル』の作中としてはアニメ以上に愛すべきキャラで、演じた田中良子はシリーズを通した丹下社長をしっかり汲み取ってくれていたのだろう。

 狂言回しを演じた大田組の3人も、ワグナー側に立ってとても楽しませてくれた。大田がアニメキャラそのままで、見ていたワグナーみんな納得だろう。

 そしてI-1Clubのメンバーである。実はアニメでは、メイン7人揃ったI-1Clubとしての印象に欠けるところがあった。しかし舞台では7人がみなトップアイドルとして輝き、レッスン風景での掛け合いで各々の個性が感じられ、アニメ以上にキャラクターとしての存在感が溢れていた。素直に「この7人も応援したい」と思わせてくれたのである。加えてキャスト陣がみなツイッターアカウントを持っていて、レッスン中や本番舞台裏の様子をツイートしてくれていたので、彼女たちもまたWUGという作品を愛し、舞台で演じることを心から楽しんでいることを感じられたのが嬉しかった。是非またこの7人が歌い踊る『Knock out』を見てみたい。

 文中は敬称略してしまったが、舞台を支えてくれた裏方の皆さん含め、心から敬意をもって感謝したい。

 心の奥深くまで沁み入る素敵な舞台をありがとう。本当にありがとう。

<追記>

 終演後に書かれたI-1Clubを演じた方々の言葉が嬉しい。舞台はWUGの物語だけど、同時にリアルなI-1の物語もここにはあったんだなと。ブログ記事にはそのリンクを、ツイッターでつぶやいてくれた方には終演後ツイートのリンクを以下に紹介します。心より感謝。

 ◆吉川愛役 岩田華怜さん
  タチアガレ

 ◆近藤麻衣役 小山梨奈さん
  Wake Up, Girls! 青葉の記録 ありがとうございました!

 ◆相沢菜野花役 水原ゆきさん
  『Wake Up, Girls!〜青葉の記録〜』終演①
  『Wake Up, Girls!青葉の記録  終演②』
  『Wake Up, Girls!青葉の記録  終演 ラスト』

 ◆鈴木萌歌役 山下夏生さん
  ※このリンク先ツイートに画像での長文記事あり

 以下お二人はまとまった記事を書かれてないが、ツイートでいろいろつぶやいてくれてました。

 ◆鈴木玲奈役 立花玲奈さん →終演後ツイート
 ◆小早川ティナ役 日下部美愛さん →終演後ツイート

3年目の正念場 − Wake Up, Girls! 3rdライブツアー開幕&舞台化発表

 2ndライブツアー以来のご無沙汰です。今でもしっかりワグナーやってますよ。

 さて、一昨日7月17日よりWake Up, Girls! 3rdライブツアーが、千葉・舞浜アンフィシアターを皮切りにスタートした。今年は千葉から大阪、新潟、仙台、沖縄、福岡、最後に東京・Zepp DiverCityと、全7ヶ所昼夜合計14公演という、なかなか野心的でハードなスケジュールとなっている。自分は諸々の事情で、今年は最初の舞浜と最後のZeppしか行けないのだけど、とにかく彼女たちを応援する気持ちは変わらない。

 ライブの感想を書く前に、少しこの1年のWUGを振り返ってみたい。

 チャレンジングで熱い2ndライブツアーは、劇場版アニメへと繋がる布石でもあった。9月と12月に前後編として公開された劇場版は、奇をてらったものではなく、プロットとしては王道で、それ自体は悪くないものだった。しかし約50分を2本、テレビ放映の4話分に収めるには詰め込み過ぎで、いきなりダイジェスト版を見せられた気分であり(特に後篇)、相変わらずもったいない出来の作品になってしまった。

 それでも一つの区切りを迎えたアニメ作品を締める形で開催された12月の幕張イベント。これにも参加してきたが、ライブは素晴らしかったものの、中盤の野球コーナーでダラダラと1時間も費やしてしまい、非常に間延びしてしまったのが残念すぎた。一昨年の幕張イベントは評判がよく、ブルーレイにもなったが、昨年のはどうやらお蔵入りしそうである。

 という感じで、作品絡みのキャンペーンは今一つの効果で終わってしまったのではないかと思う。もちろん実態は分からないが。

 しかしそんな中、「今度は自分たちが作品を引っ張っていく番だ」と、三次元のWUGメンバーたちが意気込みを新たにしている。それは単にあちこちで作品の宣伝をするということではなく、各自が新たな作品やイベントに関わっていく中で、しっかり自分たちの存在をアピールし、多くの人たちに知ってもらうことで、結果としてWUGにも興味を持ってもらおうと頑張っているのだ。

 3月のソロイベも、ななみん、よっぴー、あいちゃん、かやたん、まゆしぃの回に参加。昨年のソロイベのときよりも自信を持って自己アピール出来ており、みんな本当に頼もしくなってきている。

 そうして迎えた3rdライブツアーである。今回はホムラジであいちゃんを知ったというアイマスPを一人連れていくことが出来た。これもあいちゃんをはじめ、メンバー一人ひとりが自分の個性を活かし活躍しているからこそだ。

 オープニングはまさかの「Beyond the Bottom」から。最初からクライマックス感で、会場はみんな緑を主に、色付きライトを用意してたので、慌てて白に変更。そこから「少女交響曲」「素顔でKISS ME」と、昨年の劇場版の曲を連続で披露。もったいつけてない感じで、ぐいぐい攻めてきた。

 そして挨拶MCを挟んでの新曲。一発目は7人全員で歌う「HIGAWARI PRINCESS」。今回7ヶ所を巡るツアーでは「プリンセスシステム」という会場毎の当番制を採っており、この曲のセンターも会場毎に替わるということで、この舞浜ではみゅーちゃんが担当した。可愛らしい曲で、去年の「地下鉄ラビリンス」みたいにライブで見て楽しいタイプだ。

 続いてあいちゃん、みゅーちゃん、みにゃみの三人ユニットによる「タイトロープ ラナウェイ」。当人たちも言っていたとおり、おふざけ衆にもかかわらず聴かせるタイプの曲。そしてまゆしぃ、よっぴー、ななみん、かやたん四人による「outlander rhapsody」。こちらも少年たちの冒険を表した感じの、WUGとしては新しいタイプの曲として聴かせてきた。初回でワグナーの反応も決まっていないが、「プラチナ・サンライズ」のように間奏以外はコールなしがいいなと感じさせる2曲だ。

 そこからこの舞浜公演のプリンセス、みゅーちゃんの出番である。お馴染みのキャラソン「WOO YEAH!」で盛り上げた後、新曲の「It’s amazing show time」は、これまでライブで積み重ねてきた思いを振り返りながら語りかけるように優しく歌い上げる。そこにはアニメの岡本未夕もリアルの高木美佑も同時にいて、この天真爛漫の笑顔にも成長の跡がしっかり見えて、とてもしみじみとした気持ちに満たされた。本当にどんどん素敵になってるんだよね、みゅーちゃんは。

 ここで意外に早めの物販映像が流れた後、衣装替えしてI-1 Clubの「止まらない未来」と「運命の女神」。更に昼はまゆしぃ、みにゃみ、ななみん、みゅーちゃんによる「リトル・チャレンジャー」、夜はよっぴー、あいちゃん、ななみん、みゅーちゃんによる「レザレクション」と続いた。WUGをユニットとして見た場合、持ち歌が増えてきた今、I-1の曲を歌うことには微妙に感じるところはある。しかし後で触れるが、このライブはやはり作品としてのWUGが前提としてあり、外すことは出来なかったのだろう。曲はよいので、ライブとして盛り上がる分には異存なく、「レザレクション」など本来は1+3構成のところを、4人構成に組み直して、ちゃんと全員に見せ場のあるパフォーマンスに仕上げてきていた。

 さて、ここで再び衣装替えのために、スクリーンにはアニメの映像が流れる。アニメ全編をダイジェストとして構成された映像は、過去へと遡る形で観衆を思い出へと誘い、まだユニットが生まれる前のオーディションの場面まで導いていく。後から気づいたことだが、実はこれがこのライブの無言の設定になっているのだ。

 映像が消えて暗転し、衣装替えしてステージに現れたWUGちゃんたちは、「Beyond the Bottom」の衣装を身に纏っていた。冒頭に歌った曲をまた歌うのかと一瞬戸惑ったところで流れてきたのは、「言の葉 青葉」のイントロだ。初期の思い出を噛みしめるように歌う彼女たちと、それを聞き入るワグナーたち。続いて同じく初期の拙さと初々しさが染みこんだ「16歳のアガペー」。今これを歌うWUGちゃんたちには、もちろんもうあの頃のような拙さはなく、この曲の初々しさも含めて、しっかり自分たちのものにしている。そして本編最後のMCの後、「私たちの始まりの曲」、夜公演では「初心を忘れずに」といったまゆしぃの言葉とともに「タチアガレ!」。もはやワグナーにとっても体に染みこんでいるこの曲で会場は一体となり、公演本編を締める。

 ここで改めて最後の衣装について触れたい。何故「Beyond the Bottom」の衣装だったのか。夜公演が終わった後も、自分の中ではこれが違和感となって引っ掛かってたのだが、他のワグナーたちの感想ツイートを眺めていたら、なるほどと納得する言及があった。このライブの影のコンセプトは、3年目のWUGちゃんたちによる、これまでの歩みの振り返りなのである。アニメ作品としては最後の衣装であるBtBの白い衣装で、今ここまで歩んできた思いを込めて、初期の3曲を歌っていたのだ。過去へと遡るアニメ映像はその流れを演出しており、冒頭が「Beyond the Bottom」だったことにも、その意図があった。ライブを作品全体の中で構成しているから、当然I-1の曲も外せない。みゅーちゃんの新曲も、3年目の岡本未夕が歌っている。多分この後の公演で披露される各メンバーの新曲も、そのコンセプトに基づいているのだろう。

 お約束の「Wake Up, Girls!」コールで再びステージに現れたWUGちゃんたちは、ラフなライブTシャツに着替えて、最後はお馴染みの「7 Girls War」と「極上スマイル」で、みんな楽しく笑顔でライブを締めた。

 そのアンコール曲の間で昼に発表されたのがWUGの舞台化だ。原案・監督のヤマカン氏が無期限休業と宣言してるせいで、アニメ作品の今後は今のところ完全に白紙状態なのだけど、コンテンツとしてのWUGを終わらせるわけにはいかないという、メンバーとスタッフたちの思いが、舞台という形を導き出したのだろう。キャストは当然メンバー当人たちである。まさに体を張って三次元のWUGちゃんたちが、作品を引っ張っていこうというのだ。大抵アニメの実写化とか舞台化というのは叩かれるものだけど、これについては両手を上げて応援したい。公演は1月でまだ先だけど、絶対に見に行く。

 そしてもう一つこの舞浜公演で強く印象に残ったこと。夜公演のアンコールの合間にななみんのバースデー祝いをしたのだが、そこで語った彼女の今後へ向けた抱負の言葉が強烈だった。

 「私の役目は他からファンを連れてきて、WUGを大きくしていくことです!」

 実際に言った言葉は多少違うかもしれないが、他からファンを連れてきてWUGを大きくすること、それが自分の役目であること、そう明言したのである。ななみんはみにゃみと並んでWUG以外の仕事量も多く、売れっ子若手声優の仲間入りをしてきている。まだ目立った仕事の少ないメンバーやその子らの推しファンからすれば、嫌味にも聞こえかねない際どい言葉だ。しかし自分のホームがWUGであることを自覚し、仲間を信頼しているからこそ、こういう言葉を言えるのだろう。普段はほわほわしたタイプなのに、この時のななみんには凄みすら感じられた。

 全体を振り返って、今回のライブには新鮮さや驚くような挑戦はなかった。新曲も新たな代表曲となるようなインパクトには乏しく、保守的な印象は否めない。影のコンセプトが3年間の振り返りであったのだから、それは仕方ないのだろう。しかしだからと言って、つまらなかったわけではない。コンテンツ的に新しいものがない中で、一旦後ろを振り返られるだけの成長がはっきり見え、今出せる最大限のパフォーマンスで会場を盛り上げてくれた。もちろん舞浜はツアー初日で、去年同様ステージを重ねる毎にブラッシュアップしてくることだろう。ただ2nd初日ほどの不安定感はなく、彼女たちの自信の度合いが今年は違う。

 3年目のWUGは、明らかに正念場に立っている。だからこの3rdライブツアーは、一見保守的であっても、それは守りに入っているためではなく、道なき道へ踏み出すための決意表明のステージなんだと捉えたい。

 ツアーの途中を追えないのは残念だが、最終のZepp DiverCityでグッと踏み出す彼女たちの姿を、もう一度確認したいと思う。

Wake Up, Girls! 2nd Live Tour 千秋楽、仙台公演(東京エレクトロンホール宮城)を終えて

 7月20日に始まったツアーも、あっという間に千秋楽を迎えてしまった。大阪、福岡、舞浜、仙台の昼夜全8公演のうち、自分は大阪昼、舞浜昼夜、仙台昼夜の5公演参加。

 実は仙台前日朝、東京の自宅を出発した直後、チケットが入ったチケットケースを落としてしまっていた。家を出る直前に確認し、カメラバッグのサイドポケットと間違えてキャリーバッグの取っ手差しの間に差し込んでしまったらしく、歩いているうちにするりと落ちてしまったようなのだ。だが幸いにも親切な方が拾って下さり、チケットと同封してあった受取書に名前も電話番号も思いっ切り記載されていたため、ご連絡くれた上に、仙台のホテルまで着払いで送ってくれたのだ。チケットを買った時は個人情報モロ書きで、本人確認用とはいえこれっとどうよとか思ってたのだけど、ファンクラブ会員個人情報明記さまさまであった。本当に心より感謝。人の善意とはなんとありがたいものだろう。自らも斯くあらねばと、改めて心に誓うところであるよ。もっともライヴ当日午前中到着便で送ってもらったとはいえ、着くまでは生きた心地がしなかったが……(汗)

 そんなトラブルがあったお陰で、ライヴの方は本当に心の底から堪能することが出来た。WUGちゃんたち、ホントステキだったよ……。

 セットリストに沿った細かい話は舞浜公演の記事で書いたから割愛。今日は気持ちのままに。

 千秋楽ということもあり、とにかく全部出し切るという気持ちが伝わった熱い熱いライヴだった。一番心に響いたのは夜公演のみゅーちゃんがソロでキャラソンを歌った時。キャラソン「WOO YEAH!」に「アリーナも二階席も三階席も 今はまだエアだけど」という歌詞があり、昼公演の挨拶でも言ってたけど、夜公演で「アリーナも二階席も三階席も 今はもうエアじゃない!」って会場見上げながら歌った時は、そうだよ〜って感じで会場みんなが「ウォー!」っと声を上げて、WUGちゃんもワグナーもここまで来たんだという一体感が半端じゃなかった。規模だけなら舞浜アンフィシアターのほうがデカイのだけど、やはり仙台でこの規模のホールを埋められたというのは一つの感動だ。

 ライヴ用新曲3曲はネットに試聴用の音源がなく、毎度ライヴの記憶だけが頼りだったのだけど、さすが最後はワグナーのコールもある程度揃い、WUGの持ち歌になってきたという実感をメンバーもファンも共有出来ていたんじゃないかなと感じた。大阪で初披露された時はWUGちゃんたちも緊張気味だったし、ワグナーも当然反応のポイントが分からず、間奏で「ハイ!ハイ!」ってやるのが精一杯だったが、やはりツアーというのはそれをやりながら完成していくものなんだな。

 もちろんここはこうしたほうがいいんじゃないかな、というものもある。例えば「地下鉄ラビリンス」で「ランラランラランラランラ……Go ahead!」ってとこは一緒に歌った方が盛り上がりそうだし、そういうの覚える意味でもCD音源がほしい。

 一方みにゃみとよっぴーの「プラチナサンライズ」は、さすが聞かせる曲であり、間奏以外誰もコールしないのはいいね。二人がハモりながら情熱的に歌うのは、黄色と水色に変えたブレードを握りしめてじっと聞くのがいい。この曲もCD化してもらいたのは当然のこと、どんどん歌唱レベルを上げていく二人を見たいので、今後もライヴでガンガン歌ってもらいたい。

 今回夜公演は1階後ろの方の席だったのだけど、「言の葉 青葉」については後ろでよかった。舞浜ではプロジェクションマッピングの演出で幻想的な空気を味わったのだけど、前の方の席では広がりとしてそれが分からず、贅沢な悩みを感じていた。しかしそういう演出のない仙台でも、ワグナーがブレードで緑一色にした空間は優しく切ないバラードに相応しく、おっさんの涙腺も危うく決壊しかける。この曲は「タチアガレ!」とは別の意味でWUGの原点。この歌に込められた気持ちというのは、WUGもワグナーも忘れちゃいけないものなんだとつくづく感じている。

 そしてやはりオーラスの「タチアガレ!」。何度も歌われ、何度も聞いて、何度もコールしてきたのに、なんでこの歌はこんなにも突き刺さるような感動を覚えさせるのだろう。ツアー最後の曲とあって、メンバーもファンも全力。全員燃え尽きると同時に、今また走り始めるんだと心を新たにする感覚がこの曲の、そしてWUGの醍醐味なんだろう。やめられないよねw

 挨拶の時まゆしぃが語っていたWUGの目標、いつか武道館。夢はまだまだ遠いかもしれないけど、うん、行きたいね。行かせてあげたい。試されてるのはファンの方でもあるのだよ。

 昼に情報解禁されたバスツアーは、ちょっとアレ?って感じはあるけど、夜に発表された12月12日(土)幕張での単独イベント開催は朗報。昨年は香港競馬遠征で泣く泣く諦めたが、今年はヨーロッパ遠征に金を使うため香港はなし。安心してチケット申し込める。(もっともそのヨーロッパ遠征が続・劇場版前編公開日の9月25日から10月7日なので、最終日にしか見に行かれん。舞台挨拶とかシアター限定版BDとか諦め……)

 うん、WUGちゃんマジ止まらない。ツアーが終わった喪失感もない。もう幕張に向けてテンション高まってるよ!

 でもその前に、明日は仙台から気仙沼へ移動。天気は生憎の雨になりそうだが、WUGをきっかけに震災の痕もきちんと目に焼き付けてきたい。これも後日報告できればと思う。

新たな一歩を踏み出した7人 − Wake Up, Girls! 2nd Live Tour 舞浜アンフィシアター公演

 7月20日大阪公演より始まったWake Up, Girls! 2nd Live Tour。8月1日に福岡公演を挟み、8月8日、最大キャパの舞浜アンフィシアター公演が開催された。私は昼夜公演共に参加し、昼はCブロック後方中央、夜はAブロック前方という良席で見ることが出来た。昼の席はステージほぼ真正面で、比較的距離が近かっただけでなく、全体の動きもきちんと見え、演出意図をそのまま受け取ることが出来るポジション。夜はステージ側面からになるが、とにかくメンバーの表情を目の前に見ることが出来て、実にテンションが上がった。側面だからこそ見えてくるダンスフォーメーションの妙味もあり、昼夜共にWUGライブの魅力を心から堪能させてもらった。また、前回大阪公演のブログ記事では問題点も指摘し、彼女たちは舞浜までにブラッシュアップしてくると書いたが、その期待にも見事応えてくれた舞浜公演だった。

 正直に書いてしまおう。大阪公演で喉の調子が今一つに思えたメンバーというのはよっぴー(青山吉能)だ。実は大阪と福岡との間に行われたワンホビでのミニライヴでも、よっぴーは声の伸びを欠いている。
 ワンホビの声を聞いてみると、喉の調子が悪いというより、歌い方、声の出し方が上手くいっていない印象だ。よっぴーは高校時代合唱部にいて、コーラスでの歌い方を意識している気配がする。WUGに入ってからは、もちろんポップスのボイストレーニングを徹底的に受けているはずで、これまではそれで声は出ていたのだけど、彼女なりのこだわりで模索し始めたのだろう。しかしその答えを出せぬままに本番がスタートしてしまったようだ。

 だが、歌にこだわりのあるよっぴーはそのままでは終わらなかった。舞浜で見事に乗り越えてきたのである。今までは声が出ていたとはいっても、どこか壁があって、声の伸び幅に限界があり、大阪、ワンホビでは合唱の声楽を意識してその壁を突破しようとしたが、逆にエンストを起こしてしまった感じだった。しかし舞浜ではきちんと喉が開いた声が出ており、きれいで且つ力強く壁を突き抜け伸びてきたのだ。素晴らしかった。と同時に「よし!よっぴーの歌唱力はまだまだ伸びるぞ!」と確信したのである。なんか偉そうに書いてるけど、一応私も若いころ市民コーラスで歌っており、ポップス系のボイストレーニングも受けたことがあるので、地区大会レベルの高校球児がプロの若手選手を評するくらいには間違いないw

 さて、前回はネタバレを避けてセットリストには触れなかったが、中里キリ氏の大阪公演レポートわぐそくで公表されたため、今回は遠慮なくライブ全体の感想を書いていく。

 前回の記事では、今回のセトリは「チャレンジングな内容」だと書いたが、それはまず冒頭から、ファンにとっては分かりやすい形で登場する。1曲目「7 Girls War」、そして間髪入れずに2曲目「極上スマイル」でステージをスタートするのである。この2曲、数少ないWUGの持ち歌の中で、最もアップテンポでダンスの動きも激しく、とにかく体力を消耗するのだ。もちろん冒頭から盛り上げるには打ってつけの選曲である。しかしこれを冒頭から連続で持ってこられたことが、何より彼女たちの体力的成長なのだ。あと、せり上がりで7人並んでの登場というのは、舞浜アンフィシアターならではの演出でとても盛り上がった。個人的には特に夜公演で一番端のみゅーちゃん(高木美佑)と目が合うんじゃないかという席だったから、めちゃ高まったw

 そして一旦TVアニメ最終話の映像を流し、新たな物語のスタートして新曲「素顔でKISS ME」を披露。

 前回も書いたとおり、これはこれまでのWUGにはないクールな曲で、大人の雰囲気もレパートリーに入れてきた。9月に公開される続・劇場版の劇中歌としても使われるようだが、作中でどんな位置づけになるのかも楽しみだ。

 続いて今回最も「チャレンジングな内容」といえるのが、更なる新曲3曲の発表。続・劇場版で使われる2曲の披露はツアーが始まる段階で予想の範囲内だったが、まさかアニメ作品とは全く関係のない、ライブ用の新曲を3曲も引っさげてくるとは本当に驚きだった。しかもそのうち2曲はユニットを分けたのだ。これまで7人全員か個人のキャラソンしかなかったのを、5人と2人に分けたのである。今まではどうしてもアニメとのリンクが良くも悪くも枷となり、スピンオフの「うぇいくあっぷがーるZOO!」主題歌「ワグ・ズーズー」を除き、結局約1年半新曲を出せない原因ともなっていた。しかしこれで三次元WUGは二次元作品とはパラレルに、自由にユニットの組み合わせも替えながら、新たな展開をしていくことが可能になったのだ。

 その新曲1曲目は7人全員で歌う「地下鉄ラビリンス」。キュートでコミカルさもある、今どきアイドルっぽい曲で、注目すべきはあいちゃん(永野愛理)が振り付けを考案したということである。アニメでは最もダンスが出来ない林田あいちゃんだが、リアルでは永野あいちゃんがメンバー中最もダンス経験が長くて、メンバー一人一人の個性と可愛らしさを存分にアピールしたダンスパフォーマンスに仕上げている。リーダー、センター役は他のメンバーではあるが、実はWUGの精神的要は、みんなのおねえさん的存在であるあいちゃん。この曲のパフォーマンスはそんな彼女だからこそ出来た作品であり、見えている以上にあいちゃんのパーソナリティに裏付けされた楽曲といえるだろう。

 2曲目の「セブンティーン・クライシス」は、みゅー、あいちゃん、まゆしぃ(吉岡茉祐)、ななみん(山下七海)、かやたん(奥野香耶)の5人ユニット。明るくテンポの良いダンサブルなナンバーで、この曲のセンターはみゅー。みゅーはアニメ作中ではメンバーの中でもやや脇役ポジションで、リアルでは最年少であり、あまり自分からグイグイ前に出ていくタイプでもないから、どうしても今一つ目立たないところがあった。しかし今回のツアーでグッと成長を感じたのは、先述のよっぴーとみゅーちゃんである。元々メンバー中一番背が高く、バレエの経験もあるため、ダンスに関してはキレのあるカッコよさのあいちゃんに対し、美しさのみゅーちゃんという印象があった。そしてこの曲でセンターというポジションを得たことで、優雅で且つダイナミックな彼女のダンスが一際冴え、加えてパフォーマンスを演じることに喜び溢れる彼女の無邪気な笑顔がとてもキュートで、見ていて本当に幸せになれる。もちろん他の4人とも息ピッタリで、アイドルユニットの王道を行く曲となっている。

 そして3曲目は、よっぴーとみにゃみ(田中美海)、現在のわぐラジパーソナリティ「もやしとごぼう」の2人によるデュエット曲「プラチナサンライズ」。この2人、メンバーの中では最もおちゃらけたタイプなのだが、曲は一転、ハーモニーをじっくり聞かせるものになっている。だから2人が煽る間奏部分を除いて、観客は皆、基本的にコールを入れない。みにゃみは私が感じる限り、メンバー中最も安定したエンターテイナーだ。明るい声質でブレのない歌声を響かせ、それでいてしっかりクールな雰囲気も醸し出している。そしてよっぴー。感情を目一杯乗せ、とにかく聞かせにかかっている。特に昼公演で披露したロングトーン。これをやりたかったんだろうねw 観客からも思わず「うおぉ!」って声があがった。やや硬質なよっぴーの声に、軽量で安定したみにゃみの声が重なって、素敵なーハーモニーとなったいい曲である。

 この3曲は、ライブだけでなく、是非とも早くCD化してもらいたいものだ。

 この後は一人ひとりのキャラソンメドレー。順番は以下のとおり。

 ハジマル(まゆしぃ)
 可笑しの国(あいちゃん)
 WOO YEAH(みゅー)
 スキキライナイト(かやたん)
 オオカミとピアノ(ななみん)
 ステラドライブ(よっぴー)
 歌と魚とハダシとわたし(みにゃみ)

 ここまで個別に触れてない3人についてコメントしておこう。

 トップバッターのまゆしぃ。キャラソンについてではなく別視点から話をすると、まゆしぃというのは役者なんだなと常々感じる。歌の中の人物に入っていくのである。またエンターテイナーとしてもしっかり演じていこうとする。その分アドリブがちょい苦手なんだが。しかし誰よりもステージ全体をきちんと作り上げていこうという意思がはっきり見えるから、やっぱり彼女はセンターなんだよね。上でリンクした中里キリ氏のレポートで触れられてるが、「ハジマル」という曲をつかむまでかなり苦労してきたという。「島田真夢」というキャラとの関係性の中で曲を理解し表現することに人一倍取り組んでいたのだろう。だからこそ歌を通じて彼女が投げかけてくるものを、ファンとしてはしっかり受け止めて彼女に向けて投げ返すようにコールしてあげたいなと思っている。

 役者という意味では、かやたんもそうだ。彼女も、キャラソンに限らず、歌の中の人物になりきるように歌い踊っている。もっとも、彼女は皆に見られることで役者になりきっていくので、ソロの時は特に皆を煽る。かやたんはメンバー最年長ではあるけど、メンバーが揃っている中では決して自己主張やリーダーシップを出すタイプではなく、一見目立たない。しかし一旦自分に注目が集まれば、途端に本領を発揮し皆を惹きつけていく。今回の公演でも、彼女のそういった媚薬のような魅力に磨きがかかったように感じた。

 一方ななみんは、もう天性のアイドルなのだろう。天然なのか計算ずくなのか、あの大きな瞳と笑顔で確実にファンのツボを突き、骨抜きにしていくのである。ワグナーの中でも、かやたん推しとななみん推しは重患率が高いと思われる。真骨頂は今回よりも3月のソロイベの時だったと思うが(私はチケットが外れたのでニコ生で視聴)、今回舞台に近かった夜公演では、彼女がとにかくよく客席に視線を送ってくるのが分かった。もちろん他のメンバーもやってるのだけど、あの少しいたずらっぽさも混じった笑顔はヤバイね。ななみん推しが夢中になるのもよく分かる(斯く言う私は徹底して箱推し。7人全員がそれぞれ可愛すぎて困る。)。因みに会場ロビーでは、かつてななみんがニコ生のグッズ化プロジェクトで天然を炸裂させ、今年のエイプリルフールでネタとして実現された「等身大お弁当箱」が展示されていた。

 キャラソンメドレーの後は、I-1clubのナンバー。これまでも持ち歌が少ない中でアニメ劇中ライバルのI-1の曲は歌ってきたのだが、今まではWUGとして歌わせてもらっていたのに対し、今回は衣装もキャラ設定もなりきっての登場。元I-1メンバーだったまゆしぃの島田真夢役はそのままに、残るメンバーはI-2、I-3として自由にキャラ設定をした自己紹介で、バラエティー色を出した演出で楽しませる(個人的にはみゅーちゃんのコロスケと、針を振り切った不思議ちゃんキャラのあいちゃんがツボだった。)

 曲は、昼の1曲目が「シャツとブラウス」、夜は「ジェラ」で、2曲目は共通して「リトルチャレンジャー」。衣装も赤く揃えたことで、この瞬間だけはI-1clubのステージになりきるものの、既に歌い込んできていることもあり、これらももうWUGちゃんたちの曲にもなってるんだなとしみじみ感じた。特に「リトルチャレンジャー」はまゆしぃの曲でもある。まゆしぃのソロパートは、実はどの曲よりも島田真夢と吉岡茉祐がシンクロしているのではないだろうか。

 この後一旦衣装替えの時間も兼ねた物販紹介ビデオが流れる。大阪と舞浜では映像に登場するメンバーが異なり、舞浜の昼と夜でも一部映像が差し替わっているので、おふざけ満載のバラエティーにもなっており、いずれライヴBD化の際には特典映像として入れてくれると嬉しい。そういう意味では、開演前に流れたみにゃみの「お約束体操」(いわゆるマナー啓蒙ビデオ)やまゆしぃ書き下ろしの影ナレも全会場分是非お願いしたい。

 さて、ここでついに今回ツアーの一番の目玉ともいえる続・劇場版前篇「Wake Up, Girls! 青春の影」主題歌「少女交響曲」。まずスクリーンに続・劇場版の一部場面が流され、劇中音楽プロデューサー早坂が「ほら、くれてやるよ。」といって音楽データと思しきものをスマホでWUGメンバーにピッと送信すると、暗転してミリタリーグリーンの新衣装に着替えたリアルWUGメンバーが登場。大阪で初披露された時は、なかなかの粋な演出で、会場のテンションが一気に高まった。今回舞浜では既にワンホビのステージがネットを通じて披露されたせいもあって、観客側もバッチリ合わせていくぞという雰囲気で高まる。斯く言う私もかなり聴き込んで行った。ツアーを追いかけるというのは初めてしているのだけど、その醍醐味というのは、ステージ上の演者だけでなく、ファンもステージ毎にブラッシュアップされていくところなのだろう。

 当然WUGちゃんたちも完成度を高めてきた。大阪ではまだ少し緊張感があったように感じられたが、ワンホビ、福岡を経てパフォーマンスに自信が付いてきたのだろう。会場の雰囲気も後押ししているのかもしれない。この曲はまゆしぃとよっぴーだけでなく、みにゃみとななみんの見せ場も加わっている。明るい声質の2人が歌いながら手を取り合い輪を作り、その中を残る5人がくぐり抜けて最後のサビに突入していくところは、彼女たちが新たな扉を開き次のステージへ駆け上がっていくイメージに繋がる。一歩一歩階段を登っていくWUGらしさが滲み出ていて、なんというか胸に来るものがある。彼女たちを代表する1曲になることは間違いない。

 曲が終わったところで告知コーナー。舞浜での新規情報としては、続・劇場版の新規PVが公開された。

 その他、聖地・仙台巡りのアプリI-1clubの新曲など、コンテンツとしてのWUGにも改めて力が入っている。

 そして本プログラムラストは「16歳のアガペー」。初期のWUGの初々しさを再確認する安心さで一旦の締めとなる。

 この後はWUGライヴの様式美ともなっている「Wake Up, Girls!」コールのアンコール。最早本来のアンコールという概念はなく、これも含めてセットリストのうちなのだが、これを楽しむのもWUGライヴということでいいだろう。

 それゆえその後の演出も仕込まれており、特にこの舞浜公演では、まずスクリーンに「ペンライトを消してください」とのメッセージが表示される。暗転するとアンフィシアター特有の半円状に客席側へせり出したステージに七色のスポットライトが照らされ、それぞれの光の下に7人が登場、「言の葉 青葉」のメロディーが流れ出す。そしてしっとりと切なく優しいバラードにプロジェクション・マッピングの美しい光の演出が合わさって、会場はとても幻想的な雰囲気に満たされた。実は昼も夜も「言の葉 青葉」のときは、ボーっとこれまでの彼女たちのことを思い返していたり、あるいはこの歌の背景にある震災のことを考えたりしてしいて、終わってみると歌をちゃんと聞いておらず、ステージ上もきちんと意識して見てなくて、「あ、しまった……」となってしまった。でもまあ、それもよいのかもしれない。

 次に一転、明るく楽しい「ワグ・ズーズー」。これは曲の前に観客全員で振り付けの練習。夜の部では振り付け指導役でななみんが目の前に来て、幸せを満喫。

 そしてオーラスは、WUGの原点「タチアガレ!」。メンバーもワグナーも体に染み付いている曲だ。会場は出し惜しみない一体感に包まれ、最高の満足感をもってライヴを終了したのであった。

 WUGメンバーは、インタビューやブログ、ラジオ等で、よく自ら「成長」という言葉を使う。実は、私個人的にはちょっとこれが苦手で、自分で自分のことを「成長している」と表現することにやや抵抗感がある。ある程度分かりやすい指標がある技量に関し、その指標に到達したことを指して自ら「成長した」というのはまだよい(もっともその場合「上達」という表現のほうがマッチするが)。しかし精神力、経験値などが増したことを自ら「成長」と呼ぶと、どこか慢心に陥りそうで、「成長」とは他者から見てそう判断する言葉なのではないかと、飽くまで私個人は思っている。

 しかし彼女たちにとっては、この「成長」という言葉は、自分たちを磨き上げていくための一つの秤になっているのだろう。新たな技量を身につけた時、新たな何かを発見した時、また何かを達成した時、それを自らの証として「成長」という言葉に置き換える。そしてそれは他者から見た時、確かに彼女たちの「成長」の証なのである。

 今回のツアーでも、彼女たちの確かな成長が感じられ、そしてツアー中にもステージ毎に磨きがかかっているのが分かった。WUGはいつだって「成長中」なのである。そして今回は何より、多くの新たなチャレンジが試みられた。このツアーはこれまでの彼女たちの集大成ではなく、新たな一歩を踏み出したステージなのである。もちろんまだ来週の仙台公演が残っている。最後までこの新たなスタートを楽しみたいと思う。

Wake Up, Girls! 2ndライヴツアー開幕

 日付替わって昨日7月20日より、Wake Up, Girls! 2ndライヴツアーが、大阪なんばHatchを皮切りにスタートした。

 もうすっかり筆が重たくなり、昨年春のWUG初の単独イベントでいきおい思いの丈を書いて以降放ったらかしになっていた当ブログだが、WUGちゃんの応援は今も変わることなく続いており、ブログやラジオのチェックは完全に日常となっている。ライブ・イベント関係も、昨年夏の1stツアー東京公演(昼夜)、11月のプロジェクション・マッピングイベント、3月の各メンバーソロイベント(まゆしぃ、みゅー、かやたん回参加)、ファンクラブ「わぐらぶ」初回ミーティングに足を運んでいる。12月幕張のWUG vs I-1Clubイベントに参加できなかったのが悔やまれるが、香港競馬遠征とモロ被りだったので仕方がない。まあ、接触系イベントにも欠かさず足を運んでいるワグナーさんから見れば生温い程度だが、一応自分もワグナーを名乗っていいくらいには応援してると自負している。

 さて今回の2ndライヴツアーだが、7/20大阪→8/1福岡→8/8千葉(舞浜)→8/16仙台と4ヶ所公演。自分は当初舞浜と仙台の昼夜のチケットをファンクラブ経由で押さえ、幸い席もなかなかよいところが当たり、8月を楽しみに待つつもりでいたのだが、初日大阪で秋の続・劇場版用新曲「少女交響曲」がお披露目になると公式に発表されたため、昼公演のみ一般販売で急遽購入、参戦してきた。

少女交響曲 *CD+DVD

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 セットリストは公式にもエンタメニュース等にもまだ出てないので、詳細は差し控えるが、予告されていた「少女交響曲」と当然予想の範囲内のカップリング曲「素顔でKISS ME」が初披露されたのはもとより、その予想の範囲を越えてチャレンジングな内容で、かなり驚きのステージだった。もちろんいい意味での驚きだ。多分この試みは、今後のWUGの活動にとって、新たな展開への突破口になるだろう。

 上記新曲2曲については、まず先に「素顔でKISS ME」が披露される。これがまず最初の大きなチャレンジだ。明らかにこれまでのWUGにはない曲で、人によってはかなり戸惑いもあったのではないかと思う。まあ敢えて比較するならI-1の「ジェラ」に近いイメージか。これまでライヴではWUGも「ジェラ」を歌っていたけど、自分たちの持ち歌としてこの路線を一つ加えたのは、やはり一つの挑戦といえるだろう。

 そして「少女交響曲」。こちらはある意味王道で、劇場版主題歌としてピッタリだと思う。即ち、アニメ作品「Wake Up, Girls!」の物語を確実に引き継いでおり、デビュー曲「タチアガレ!」が彼女たちの目覚めの曲、「7 Girls War」が7人一つになって走り始めた曲であったのに対し、「少女交響曲」は試練に抗い乗り越えていこうという曲と感じた(もちろん歌詞を一発で記憶できるほど自分の頭はよくないので、飽くまでイメージ)。劇場版のTVCM等で流れば、WUGを知らない人でも耳に止まるようないい曲に仕上がっている。

 もう一つ今回の彼女たちのチャレンジを明らかにしてしまうと、全て歌に徹していたことだ。今までは持ち歌が少ないせいで、どうしても余興的なコーナーが入ることになり、それはそれで楽しいのだけど、今回は衣装替えの間物販用のビデオを流すとかを除けば、徹底して「ライヴ」だった。当然彼女たちにとって、歌やダンスを覚えるレッスンにおいても、本番の体力的にも、これまで以上に大変だったと思う。しかしそこに踏み込んでいけたのは、間違いなく彼女たちの成長だ。

 とはいえ、ファンだからといって手放しに全てを評価するつもりはない。正直に言うと、今日はまだそれらの挑戦を十分には消化し切れてなかったと思う。競馬に喩えるなら、休み明けでまだ完全には息が出来ておらず、手応え良さそうに直線に入ったものの、最後の一伸びを欠いて3着といった感じだ。実際ペース配分を誤ってか、枯れていたとまではいかないものの、最後は喉の調子が今一つだったメンバーもいた。新曲ではマイクの掴みが悪いのか、声を上手く拾いきれていないようなところもあり、いろいろ改善すべき点はあると感じる。

 しかし続けて競馬に喩えるならば、今日は休み明け一叩き目の毎日王冠だ。次に初公演となる福岡が、3歳馬や別ステップを進んできた馬たちと最初に相見える天皇賞(秋)。最もキャパの大きい舞浜アンフィシアターが世界の強豪も集うジャパンカップ。そしてツアー最後となる聖地仙台は、互いの手の内を知る者同士が集まる年末の祭典、有馬記念といったところだろう。福岡は自分は行けないが、一戦ごと、一公演ごとにブラッシュアップし、舞浜、仙台では更に磨きのかかったWUGちゃんたちが見られることを期待しているし、彼女たちなら絶対それに応えてくれるだろう。そういう意味で、ツアーを追いかけるということそのものが、実に楽しみになってきた。

 うん、WUGはまだまだ止まらない。