最高の楽しさと意外性に溢れた「終わりの始まり」 ー Wake Up,Girls! FINAL TOUR -HOME-〜 PART I Start It Up,〜 開幕

 6月15日の解散発表から1ヶ月。7月14日、ファイナルツアーが開幕した。
 敢えて言う。「終わりの始まり」であると。
 来年3月へ向けて、彼女たちはどのようにこの最後の長征の狼煙を上げるのか、一言ではとても言い表せない思いを胸に、私は市原市市民会館へと臨んだ。

 やってくれた。決して予想外とは言わない。きっと明るいステージにしてくるに違いないとは思っていた。しかしその想像を優に越えてきたのだ。
 2ndツアー以降定番となっていた「お約束たいそう」がなく、突然意外な人物のナレーションによるオープニングコール。そしてカーテンが開き、まさに「It's a SHOW TIME!」
 なんということだろう。ずっと成長過程を見てきたつもりなのに、WUGちゃんたちがこんなにも素晴らしきエンターテイナーになっているなんて…。すまぬ。ドイツ語の単語しか出てこない。Wahnsinn...
 もう楽しいなんてもんじゃない。だって、彼女たちは客席にまで飛び出してくるのだから。それもワグナーへの信頼の証で、絶対に混乱を来たさないという客席への自信があるから出来るパフォーマンス。嬉しいじゃないか!
 そしてリーディングライブ。歌を削ってでも見せたかったこの朗読劇は、WUGが歌って踊るアイドルユニットというだけでなく、何よりまず「声優ユニット」だというアイデンティティを示している。しかもそれは、WUGという7人の「声優ユニット」だからこそ出来るアドリブと阿吽の呼吸であり、ベテラン同士が掛け合う手練れの上手さとは違う、仲間としての絆があってこその演技がそこにはあるのだ。
 また、セトリも最後まで意外性の連続だった。定番曲の「7 Girls War」も「Beyond the Bottom」も、5月のグリフェス昼公演で一般投票1位だった「少女交響曲」すらないのだ。今までならトドメの場面で歌われる「タチアガレ!」すら、盛り上がりの勢いの中に滑りこませ、本編はしかし、彼女たち自身が作詞した「Polaris」でしっかりと締める。
 1stツアーの「素人臭くてごめんね!」から4thツアーの「ごめんねばっかり言ってごめんね!」まで続いていた「ごめんね!」シリーズのツアータイトルがなくなり、この日のライブは「もうごめんねなんて言わないよ!」という茶目っ気たっぷりな笑顔と自信に溢れていた。本当にもうみんな最高に素敵なレディーだよ。
 「HOME」と題して始まったこのファイナルツアーは、まさにWUGちゃんとワグナーのホームパーティ。コールの一体感も今までの比じゃなかった。
 だからこそ、最高の楽しさの奥に残るどうしようもない寂しさが拭えない。まだまだこんなにも新しい可能性を見せてくれる7人なのにと…

 しかしまた、だからこそ、敢えて一つ不満点も書いておく。
 衣装替えの間にスクリーンに流れたあのメッセージ。ツイッターを眺めると意外に好意的な声が多いのだが、私にはダメだった。
 あれは一体誰の声なのか?文脈的にWUG7人自身が発したメッセージではない。ワグナーの声を代弁しているつもりなら、みなそれぞれに複雑な気持ちを抱えている中で、勝手に一つの方向に連れいていこうとしないでほしい。運営サイドの声だというのなら、今回ばかりはちゃんと責任者が顔を出して話してほしい。座間と大宮でもあれを流すなら、その間私は目を瞑ることになるだろう。

 この日は、アニサマへの参加決定のサプライズ発表もあった。今年はファイナルツアーに集中したスケジュールになるものと思っていたし、WUGちゃんたち自身も諦めていたようだった。それだけに、発表と同時にまゆしぃは座り込み、よっぴーは泣き出してしまう。WUGとしてあのステージに立つことはもうないと思ってたのだろうから、その感慨はひとしおだろう。平日だし今更チケットを取れるようなイベントではないので私は行けないが、是非ともあの2万人を越すオタクどもに、今最強の7人の姿を見せつけてやってほしい。できれば7人が書いた歌「Polaris」でSSAを一つにしてほしい。

 終わりあるホームパーティが最高の楽しさとともに始まった。公演を重ねるごとに気持ちはきっと複雑に巡ることになるだろう。しかし、それでもきっと最強を塗り替えつつ進むWUGちゃんたちを、最後まで見届ける覚悟は出来た。