ソ・ラ・ノ・ヲ・ト ― 第5話「山踏ミ・世界ノ果テ」

内容(公式サイト 各話あらすじより)
初夏、クラウスの手で時告げ砦に届けられた何通かの手紙。
手紙の差出人を見て喜ぶカナタと、嬉しそうなノエル。
忌々しげに悪態を吐くリオと、そんな皆を少し寂しそうに眺めるクレハ。
第1121小隊の隊員達は、それぞれに違った反応を見せます。
そしてフィリシアの元に届いた一通の手紙。
そう、その手紙がカナタ達の運命を左右する、すべての始まりだったのです――!

 相変わらず長閑でゆるゆるモードの楽しい軍隊生活が描かれる一方、ここが重い過去を背負った世界であることが明示された今回の話。

 人間模様に関しては、今回はクレハ回と捉えていいかと思う。それぞれに私信が届けられる中、一通の手紙もなく寂しげに皆を眺めるクレハ。そんな彼女に気を遣って、伝令としてやってきたクラウス少佐に土産を渡すよう遣わすリオ。顔を赤くし舌を噛むほど緊張しながらクラウスに土産のワインを渡すクレハは、一見中年オヤジに惚れているように見えるが、多分それ以上に憧れの存在なのだろう。クラウスの過去の活躍をカナタたちに話す彼女の姿は、英雄を称えるというより身内の自慢話のようでもあった。多分クレハは家族を失っており、クラウスを理想の父のように憧れているのかもしれない。リオに執着するのも強い姉への憧れであり、強い者からの自己の存在価値の承認欲求なのである。それゆえ逆に同年輩のカナタやノエルに対しては必要以上に強がってみせる。それが分かっているから、リオは厳しくも優しい姉であり、フィリシアは暖かく全てを理解した母(だからこそ腹黒くも見える)を演じているのだと思う。

 冒頭タケミカヅチ内で実戦さながら(の気分)で行われるシミュレイション訓練。主砲の焦点合わせが出来るのは、前回の光学センサーレンズのお陰かしら。とりあえず旧時代のハイテクノロジーは、物語上お約束の存在となった。今回は更にその旧時代の足跡を辿る。

 フィリシア隊長曰く「遠足」と称した訓練行(あの激重ザック3つを出発点まで運んだのは誰?もしかして隊長???)で、カナタ、クレハ、ノエルの3人は、セーズ南側の州境=ノーマンズランドとの境界にある旧時代の監視装置3基の定期チェックを命ぜられる。ノクター型監視装置と称されるそれらは完全ブラックボックスということで、分解も修理もできない。花が咲き広がる草原に佇む1基目の監視装置は、さながらラピュタの天上庭園を独り守り続けていたロボットのようだ。

 水遊びしたり、リオが仕組んだトラブルで苦労したり喧嘩したりしながらも、なんとか3基目の監視装置まで辿り着いた3人。そこで彼女たちが見たものは、崩れた建物があちこちに顔を出して埋もれる果てしない砂漠、ノーマンズランド(nomansland)。第2話で映された地図ソ・ラ・ノ・ヲ・トまとめWiki参照)に「here be winged demons(ここに翼を持つ悪魔たちがいる)」と書かれている場所だ。
 「ここが、人が住む世界の果て。」(ノエル)
 即ち、3人が歩いてきた山の緑、澄んだ川、花の草原、そしてセーズの町は、人が住む世界としてギリギリに守られた場所なのである。

 ここでぼんやりとであるが、第1話で語られた「炎の乙女」の伝説の姿が見えてきた。「悪魔」とは、町や自然を「ノーマンズランド」に変えた旧時代の大量破壊兵器か何かなのであろう。第1話で「この町の谷底に羽の生えた悪魔が住みつきました。」とリオが語るとき映されたシーンには、砂漠と戦闘機らしきものの残骸があった。そして砦の乙女たちが「迷宮を脱出すると、巨大な蜘蛛の力を借りて悪魔を倒し、」とある場面ではタケミカヅチとノエルが映される。タケミカヅチは多脚砲台の自立歩行型戦車、即ち「巨大な蜘蛛」の形をしている。きっと「砦の乙女」とされる女性兵士たちがタケミカヅチとともに最後の防衛ラインを戦った史実が、形を変え、伝説として伝わったということなのだろう。そうすると、あの川底の巨大な鳥の化石は何だということになるが、まあそれはとりあえず保留…。

 さて、次回はカナタの休日。…毎日お休みのようにもみえるが。